「無愛想で感情表現の下手なやつ。」
『阿部隆也』という人間とチームメイトになってすぐこの感想が浮かんだ。
《あれじゃ損するだろうな~!》
と思ったけど自分のことではないのでほっといた。
だって自分のことは自分でしか変えられないジャン!?
しょーがないよな。
なんて、少し冷たいだろうか。そんなことを結構のほほんと考えていたりしていた。
だけど。
「俺、お前のこと好きだよ!」
その場面を見つけてびっくりした。
「おれはお前がピッチャーじゃなくても好きだよ!」
ただ、なんとなく三星を探検していた。
それだけだった。
それだけで阿部と三橋が手を握り合っている場面に遭遇して。
三橋を見つめる阿部の目に釘付けになった。
《隠れていた感情が出るとこうなるのか・・。》
いいなあ。
と思った。
あの目に見つめられたい。
独占してみたい。
それを一身に受ける三橋がうらやましくなった。
《『スキ』っていってくれるにはどうしたらいんだろうな。》
うんうん唸って考えていたらどこからか花井の俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
《あ、時間じゃん!》
あわてて戻ろうと二人を見るともう姿が見えなくなっている。
《今日のバッテリーは最強だな》
あんなに固く結びついたんだ。最強じゃないはずがない。
とりあえず、考え事は保留にしておいて試合場に向かおうと花井の声のする方に足をむけた。
「あ!田島!なにやってんだよ!」
「わっりーい!探検してた!もう始まんの!?」
「ああ、ミーティングはじめっからいくぞ」
能天気なせりふに花井が呆れた様なため息をつく、
なんだよう、いーじゃんおかげでいいもん見れたんだから。
くるりと背中を向けて歩きだす花井の後を追いながらまたさっきの阿部の顔を思い出していた。
《おれもあれだけの思いを受けたいな》
『とりあえず、今日は思いっきり球を打ち上げてやる!』
テンションがあがってきてゆっくり歩いてられなくなってきた。
心の勢いのまま走り出す。
「花井さき行ってっぞー !」
「あ?あ~!田島!!もう!勝手なやつ!」
「わりい!花井!今日は俺がんばんなきゃいけねーから必死なの!」
「はあ!?いつもがんばれよな!」
「そっか!だよな!いつもだな!」
試合でいつも白球打って、受け止めて勝ったらあいつは俺を視界に入れてくれるだろうか?
あんなジョーネツ的な瞳を向けてくれるだろうか?
それっていいなあ。
想像しただけでニヤニヤしだして自分キモい!と思うけど止まらない。
キモい自分もまあいっか!
「よし!打って打って打ちまくるぞー!」
「お・・?おー!!??」
はてなマークを盛大に顔に出しながら追いかける花井に「へんなの!」と笑いながらグラウンドに戻った。
今日の青空は飛ばした白球がよく映えそうだ。
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後日、阿部のあまりの過保護ぶりに「うっぜー」と思ったけど
「ありゃ、三橋がムボービ過ぎるからああなってるだけでそうじゃなかったらいいんだよな。」と気を取り直した。
だって、あのままだったらいやじゃん!